コラム

2022.06.09

植栽から考えるパッシブデザイン

植栽から考えるパッシブデザイン

2月に引き渡したお家です。庭とのつながりをテーマに、植栽のバリエーションを豊かにした計画にしました。

植えられた木々は、春を迎えて装いが変わりました。

河合工務店 植栽

草木の生命力を感じるとともに、日々の暮らしの中に“移り変わる”ものがあるのはとても豊かなことだとしみじみ感じています。

昨今、お客様から住宅の省エネ性能についてのご質問やお問い合わせをいただくことが増えてきました。
高気密・高断熱というワードも一般の言葉として浸透してきたのではないでしょうか。
では、性能が良い家でどんな暮らしを求めていらっしゃるのでしょうか?
夏涼しくて冬暖かいという心地よい暮らしを叶える「性能のデザイン」は、家を建てた後からでもできます。
植栽でもできるパッシブデザインについてお話をしたいと思います。
 

植栽・樹木を用いたパッシブデザイン

パッシブデザインというのは“パッシブ=受け身”を意味しており、簡単に言うと太陽や風など自然エネルギーを有効活用した設計方法のことです。
四季のある日本で快適に暮らすためには「太陽の日差し」をどう生かすかが重要になります。
例えば、昔から日本にある簾(すだれ)や葦簀(よしず)は、夏場につけることで強い日差しを遮りながらさわやかな風を通し、冬場は外すことで暖かな太陽光を家に取り入れられます。
これはパッシブデザインの良例の一つかと思います。

パッシブデザインには、植栽・樹木を用いた方法もあります。
樹木には常緑樹と落葉樹があり、落葉樹は春夏に生い茂り、秋冬に葉を落とし、姿かたちを変えます。

こちらのお住まいでは、“コハウチワカエデ”という落葉樹を南西向きの大きな窓の横に配置しました。日本固有のカエデの一種です。植えた2月ごろはまだ赤みを帯びた枝のみの姿です。
河合工務店  コハウチワカエデ

5月になり、葉っぱが生い茂りだしました。
四季のサイクルの中で日射の取得と遮蔽を自らコントロールしてくれます。
また、視覚的にも鮮やかさ、瑞々しさを感じられるのも快適さを演出してくれています。
コハウチワカエデ 河合工務店 外構 春
コハウチワカエデは、和風庭園で見られるイロハモミジに比べて葉の切れ込みが浅く、丸みを帯びた柔らかな印象です。小さな子供の手のひらのようでとても愛らしい形をしています。紅葉期はまだ迎えてないですが、窓から眺める秋の風景も待ち遠しいですね。

 

次に、最近シンボルツリーとしてもよく用いられる“ジューンベリー“をご紹介します。

河合工務店 植栽 シンボルツリー

3本並んでいるうちの真ん中の樹木です。こちらも2月ごろはまだ枝のみで存在感がないですが、3か月も経つとこうなります。

河合工務店 ジューンベリー 植栽

そう、実がなります!
緑色の実が熟して徐々に赤くなり、収穫することができます。
砂糖、レモンと煮詰めてジャムにすると、チェリーのような風味がほのかに香り、とても甘くて美味しいですよ。

河合工務店 ジューンベリー ジャム

単調な毎日に潤いを与える趣味やイベントなどの活動のように、日々の暮らしに変化を与えてくれる役割も植栽を取り入れるメリットのひとつだと思います。

落葉樹は、春夏には生い茂った葉が太陽の光を遮り木陰を作ってくれ、秋冬には落葉して、暖かい太陽の光を室内に取り込んでくれます。枯葉の掃除、除草作業などが煩わしいという観点から敬遠される方もいらっしゃいますが、手入れをすれば愛着も沸きますし、何より暮らしに彩りをもたらしてくれます。

そんな建ててからもできる「植栽によるパッシブデザイン」を取り入れてみてはいかがでしょうか。